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代名詞(PRO)および空要素 *pro* を主要部とする NP には常に束縛情報が付与される。 先行詞 NP が同じ文あるいは先行する文に明示されているときは,先行詞にも同じ情報を付与する。 また,束縛情報はそのペアだけに与えられるものでなければならない。
代名詞(再帰代名詞をのぞく)には次のようなものがある:
疑問代名詞には次のようなものがある:
再帰代名詞は,本アノテーションでは他の代名詞と同じように扱われる。 再帰代名詞を主要部とする NP にも束縛情報が付与される。 先行詞が同一の文に現れる必要がないこと,また,常に主語と関係するということにより, 日本語の再帰代名詞は伝統的な束縛理論における anaphor の記述には従わない。 しかし,再帰代名詞を他の代名詞と同じように扱うことにより,それらが検索可能になる。 以下のように,再帰代名詞のリストはそれほど大きくはない。
次の例において,再帰代名詞「自分自身」は同一文中に先行詞をもたない。 むしろ,これは話者自身を指している。 このように特定の束縛情報が得られない場合には,;{SPEAKER} とアノテーションを与えることにする。
(181)
自分自身は息子なんです――
( (IP-MAT (PP (NP;{SPEAKER} (PRO 自分自身))
(P は))
(NP-SBJ *)
(NP-PRD (N 息子))
(AX な)
(P ん)
(AX です)
(PU ――))
(ID 240_aozora_Hayashida-2015))
再帰代名詞を含む名詞句が,同一指示の名詞を含む名詞句に続いて現れるとき,前者は (PRN (NP (PRO ))) とラベル付けされ,後者と同じ束縛情報を付与される。
(182)
ヘプバーン自身は「一目ぼれだった」と語っている。
( (IP-MAT (PP (NP;{HEPBURN} (NPR ヘプバーン)
(PRN (NP;{HEPBURN} (PRO 自身))))
(P は))
(NP-SBJ *)
(CP-THT (IP-MAT (-LRB- 「)
(NP-SBJ *speaker*)
(NP-PRD (N 一目ぼれ))
(AX だっ)
(AXD た)
(-RRB- 」))
(P と))
(VB 語っ)
(P て)
(VB2 いる)
(PU 。))
(ID 265_wikipedia_Audrey_Hepburn))
以下は再帰代名詞が先行詞と同じ節に現れた例である。
(183)
私はブランド品で自分を着飾った.
( (IP-MAT (PP (NP;{SPEAKER} (PRO 私))
(P は))
(NP-SBJ *)
(PP (NP (N ブランド品))
(P で))
(PP (NP;{SPEAKER} (PRO 自分))
(P を))
(NP-OB1 *を*)
(VB;{着飾る.01} 着飾っ)
(AXD た)
(PU .))
(ID 845_dictionary_vv-lexicon_20150226))
以下は再帰代名詞の先行詞が文中の別の節に現れた例である。
(184)
さらにヘプバーンは自身が魅力ある女性だとは思っていなかった。
( (IP-MAT (ADVP (ADV さらに))
(PP (NP (NPR ヘプバーン))
(P は))
(NP-SBJ *)
(PP (CP-THT (IP-SUB (PP (NP (PRO 自身))
(P が))
(NP-SBJ *が*)
(NP-PRD (IP-REL (NP-SBJ *T*)
(NP-SBJ2 (N 魅力))
(VB ある))
(N 女性))
(AX だ))
(P と))
(P は))
(VB 思っ)
(P て)
(VB2 い)
(NEG なかっ)
(AXD た)
(PU 。))
(ID 380_wikipedia_Audrey_Hepburn))
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