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この節では,会話に特有の表現をどのようにアノテートすべきかについて説明する。
INTJ とラベル付けされた個々の単語は,たとえ節のレベルの構成素であっても INTJP を投射することはない。
(471)
「ああ、王は悧巧だ。
( (IP-MAT (-LRB- 「)
(INTJ ああ)
(PU 、)
(PP (NP (N 王))
(P は))
(NP-SBJ *)
(ADJN 悧巧)
(AX だ)
(PU 。))
(ID 84_aozora_Dazai-2-1940))
INTJP のラベルは,以下のような場合に使用される。
(INTJP (INTJ もしもし)
(PU 。))
(INTJP (INTJ はい)
(PU 。))
(IP-IMP (NP-SBJ *hearer*)
(INTJP (INTJ すみません)
(P が))
(PU ,)
(PP (NP (N 塩))
(P を))
(NP-OB1 *を*)
(VB 取っ)
(P て)
(VB2 ください)
(PU 。))
(INTJP (IP-SUB (ADVP (ADV そう))
(AX です))
(P ね))
(INTJP (NP (PRO それ))
(P が))
CONJP の姉妹としてのレベルでは,間投詞の付加は行われない。
FS は開始誤りを示し,すなわち発話冒頭の繰り返しや言い直しのために言い間違いが生じた場合に用いられる。
(472)
「ひ、ひ、人殺しイ……」
( (FRAG (-LRB- 「)
(NP (FS (N ひ)
(PU 、))
(FS (N ひ)
(PU 、))
(N 人殺しイ))
(PU ……)
(-RRB- 」))
(ID 41_aozora_Kunieda-1925))
(473)
この場所ここのアリーナもまたギリシャの円形劇場のように忘我の状態のための場所です
( (IP-MAT (FS (NP-SBJ (D この)
(N 場所)))
(PP (NP (IP-REL (NP-SBJ *T*)
(NP-PRD (PRO ここ))
(AX の))
(N アリーナ))
(P も))
(NP-SBJ *)
(ADVP (ADV また))
(PP (NP (PP (NP (PP (NP (NPR ギリシャ))
(P の))
(N 円形劇場))
(P の))
(N よう))
(P に))
(NP-PRD (PP (NP (PP (NP (PP (NP (N 忘我))
(P の))
(N 状態))
(P の))
(N ため))
(P の))
(N 場所))
(AX です))
(ID 46_translated_TED_3-MihalyCsikszentmihalyi_2004))
会話体のテクストには省略が多くみられる。 ゼロ代名詞,すなわち主要文法役割を果たす名詞句の省略については第6節を参照のこと。
主要文法役割を果たす助詞が省略された場合,当該の主語または目的語を表す名詞句は NP-SBJ や NP-OB1 のようにラベル付けされる。
(474)
ご飯食べた?
( (CP-QUE (IP-SUB (NP-SBJ *hearer*)
(NP-OB1 (N ご飯))
(VB 食べ)
(AXD た))
(PU ?))
(ID 968_textbook_kisonihongo))
(475)
あれ、雨降ってる。
( (IP-MAT (INTJ あれ)
(PU 、)
(NP-SBJ (N 雨))
(VB 降っ)
(VB2 てる)
(PU 。))
(ID 969_textbook_kisonihongo))
この場合,係助詞「は」を補うことが出来る場合でも,格表示に関する情報を補うだけでよく,「は」に関する補完を行う必要はない。
(476)
あいつ、どこ行ったのかな。
( (CP-QUE (IP-SUB (NP-SBJ;{MEN_971} (PRO あいつ))
(PU 、)
(NP-LOC (WPRO どこ))
(VB 行っ)
(AXD た)
(P の))
(P か)
(P な)
(PU 。))
(ID 971_textbook_kisonihongo))
名詞句内の主要部の省略については 30.1 節を参照のこと。 IP-ADV における主要部の省略に関する議論については 30.2 節を参照のこと。
格役割を果たす名詞句が外置される場合,当該の名詞句は文本体と *ICH* を用いたインデクス付けによって関係つけられる。
(19)
美しい街ですよ、神戸は。
( (CP-FINAL (IP-SUB (PP *ICH*-1)
(NP-SBJ *)
(NP-PRD (IP-REL (NP-SBJ *T*)
(ADJI 美しい))
(N 街))
(AX です))
(P よ)
(PU 、)
(PP-1 (NP (NPR 神戸))
(P は))
(PU 。))
(ID 989_textbook_kisonihongo))
(478)
来た、来た、バスが。
( (CP-FINAL (IP-SUB (PP *ICH*-1)
(NP-SBJ *が*)
(IP-ADV (VB 来)
(AXD た))
(CONJ *)
(PU 、)
(VB 来)
(AXD た))
(PU 、)
(PP-1 (NP (N バス))
(P が))
(PU 。))
(ID 990_textbook_kisonihongo))
縮約が生じる場合,当該の語形は,比較的重要なタグである VB2 や AX とアノテートされる。 これにより,「てく(< ている)」,「とく(< ておく)」はすべて VB2 とラベル付けされる。 以下に例を挙げる。
(479)
僕、もうやめちゃうけど、君はどうするの。
( (CP-QUE (IP-SUB (PP (IP-ADV (NP-SBJ;{SPEAKER_992} (PRO 僕))
(PU 、)
(ADVP (ADV もう))
(VB やめ)
(VB2 ちゃう))
(P けど))
(SCON *)
(PU 、)
(PP (NP;{HEARER_992} (PRO 君))
(P は))
(NP-SBJ *)
(ADVP (WADV どう))
(VB する)
(P の))
(PU 。))
(ID 992_textbook_kisonihongo))
(480)
ここに置いとくよ。
( (CP-FINAL (IP-SUB (NP-SBJ *speaker*)
(NP-OB1;{SUTFF_998} *pro*)
(PP (NP;{CURRENT_POSITION_998} (PRO ここ))
(P に))
(VB 置い)
(VB2 とく))
(P よ)
(PU 。))
(ID 998_textbook_kisonihongo))
「なきゃいけない」や「ちゃいけない」は MD とされることに注意すること。
重要な機能を果たす語形が明示的に現れない場合,補完する必要がある。 次の例において,「やめたきゃ」に「*ば*」が補完されている。
(481)
そんなにやめたきゃ、やめりゃいいじゃないか。
( (CP-FINAL (IP-SUB (NP-SBJ *hearer*)
(PP (IP-ADV (ADVP (ADJN そんな)
(AX に))
(VB やめ)
(AX たきゃ))
(P *ば*))
(CND *)
(PU 、)
(PP (IP-ADV (VB やめりゃ))
(P *ば*))
(CND *)
(ADJI いい)
(AX じゃ)
(NEG ない))
(P か)
(PU 。))
(ID 1001_textbook_kisonihongo))
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